バーベキューブーム 本場アメリカの南部料理って?
日本でバーベキュー・ブームが盛り上がりつつあります。本場アメリカのバーベキューでは、サイドディッシュもとても重要。ここでは本場アメリカ南部料理(Southern Cooking)の代表的なメニューの中から、サイドディッシュにぴったりの3品をご紹介します!ヘルシーで美味しいサイドディッシュがあれば、バーベキューもさらに盛り上がること、間違いなし!です。
アメリカ南部とバーベキュー
アメリカ南部料理を語るうえで、欠かせない1冊の料理本があります。「The Taste of Country Cooking, 1976(テイスト・オブ・カントリークッキング 1976年刊)」。
この本の著者エドナ・ルイス(Edna Lewis、1916年4月13日~2006年2月13日)は、アメリカ南部料理の伝説的シェフであり、アメリカ南部の食文化の啓蒙と継承に尽力した女性です。
エドナ・ルイスが立ち上げに携わったニューヨークのレストラン「Café Nicholson(カフェ・ニコルソン)」は、テネシー・ウィリアムズ、トルーマン・カポーティといったアメリカ近代文学の文豪が足しげく通ったことで有名。
グロリア・ヴァンダービルトやマレーネ・ディートリヒ、ダイアナ・ヴリーランドといったファッション・リーダーたちにもこよなく愛されました。
アメリカ北部の中心地、ニューヨークで開かれたこのレストランは、南部出身者にはふるさとの味を、北部で育った米国人にはそれまで知らなかった南部料理の魅力を運んだのです。
エドナの人気の秘密
これほどの人気料理人となったエドナは、どのようにその腕を磨いたのでしょうか?
エドナの著書には、レシピの1つ、ドレッシングの1つをとっても「これは〇〇夫人のレシピ」「シェフの〇〇さんが教えてくれた味付け」と、きちんと記載がされています。
南部に暮らすファミリーが何代にもわたって大切に育ててきた味。おばあさんからお母さんへ、そして子供たちへ大切に教えられた味。本物の家庭料理レシピの集大成が、エドナの料理なのです。
南部料理は「政治の一部」
エドナ・ルイスは州知事の料理人としても活躍し、たくさんの賓客を美味しい南部料理でもてなしました。著書の中で「南部の料理人は政治の舞台でも大きな役割を担う」と書いています。
今回はそんなエドナが代表的な南部料理として書き残したレシピのうち、バーベキューのサイドディッシュにも利用したい3品をご紹介します。
1. チキンサラダ
チキンサラダは、その名の通り、トッピングにたっぷりとチキンをあしらったサラダ。鶏胸肉を使うことが一般的です。胸肉はパサつきがちなため、上手に下処理をする、または火を通すのがコツです。伝統的な南部料理では、チキンサラダの鶏胸肉は「湯せん」調理です。
湯せん(低温調理)チキン
湯せんチキンはお鍋ひとつあれば調理でき、下準備が不要です。大きなオーブンがない日本の家庭にも向いている調理法だと思います。
エドナ・ルイスも著書ではこの方法を紹介していますし、料理愛好家の平野レミさんがこの方法で胸肉を調理するのをテレビで拝見したことがあります。
お鍋にたっぷりとお湯を沸かし、火を止めたら、常温に戻しておいた胸肉をポン、と放り込んで20~30分ほど蓋をしておくだけ。なんとも簡単な調理法です。
生っぽければ「追い加熱」
胸肉に火が通ったか確認をし、もしまだ生っぽい部分があれば、もう一度、お鍋を沸騰させます。火を止めてまた蓋をし、10~15分ほど待てば、完全に火が通ります。
お湯に少量の塩を入れておいてもいいですし、薄いコンソメスープや、鶏がらスープでもOK。薄味ならいろいろと試しても失敗はありません。茹で湯にショウガやネギを加えると中華風になりますし、ハーブソルトを入れると洋風になります。いろいろ工夫してみてください。
胸肉を茹でたスープは、チキンストックとしてスープなどに利用できますので、ぜひ捨てないようにしてください。
チキンは「角切り」が正当派
チキンサラダは、スライスしたチキンでも良いのですが、皮をとって角切りにするスタイルが、エドナ・ルイスの勧める正統派の盛り付け。
たくさん作って冷蔵しておけば、マヨネーズで和えるだけでチキンサンドイッチの具にもなるそうです。冷蔵庫で保存すれば、3日間は大丈夫です。
カットしないで茹で汁に浸けたまま保存すれば、さらに1~2日ほど日持ちします。
時短バージョン:「サラダチキン」を利用
時短したい場合、スーパーやコンビニで売っている「サラダチキン」を利用します。野外で手軽に料理をするなら、袋に入ったサラダ用野菜と、サラダチキンでも、じゅうぶん美味しく頂けると思います!
バーベキューでお肉を焼くのに手いっぱいだと思うなら、ぜひ時短バージョンで。
アレンジバージョン:グリルド・チキンを利用
アメリカではオーブンで香ばしく焼いたグリルド・チキンをサラダに利用する人も多いようです。アメリカでは多くの家庭にオーブンがあり、オーブンにポンと入れるだけのグリルド・チキンは手軽さで人気の調理法です。テイクアウトも豊富。
胸肉のオススメ下準備3通り
胸肉はそのまま焼いてはパサつきますので、少量のオイルでまぶしたり、「ブライン液」と呼ばれる、塩と砂糖をごく少量入れた水に数時間~1晩ほど浸しておきます。
このブライン液にどんなハーブや香辛料を入れるかは、各家庭によって工夫がありますが、まずはシンプルに新鮮な胸肉と基本的な調味料でスタートしましょう。
- 基本のブライン液…水100㏄に塩5g、砂糖5gを溶かし、ビニール袋などに入れる。その中に胸肉を浸しておく。効果:煮ても焼いてもしっとりする。
- 醤油を使ったアジア風アレンジ…白ワイン、醤油、蜂蜜をビニール袋に入れ、その中に胸肉を浸しておく。効果:ブラウジングと同じ効果がある。※アメリカ南部ではなく、バーベキューとワイン造り、養蜂が盛んなオーストラリアの調理法ですが、たいへん日本人好みです。
このほか、マリネもおすすめです。
- 基本のマリネ…胸肉に塩コショウを軽くふり、大さじ1~2杯のオリーブオイル(ごま油も可)などで軽く揉んでおく。効果:鳥肉特有の臭みが減って、焼くと香ばしくなる。
調理は「オーブンに入れるだけ」
下準備した胸肉は、熱したオーブンに入れて中温で焼くだけ。オーブンにポンと入れるだけです。
このやり方の場合、胸肉は鶏皮付きのほうが、香ばしく仕上がります。皮に含まれる脂がじんわりと沁み出して、お肉がリッチに仕上がるのです。カットする前に少し休ませたほうが、肉汁たっぷりになります。
2. コールスローサラダ
大御所のエドナが「これ抜きでは州知事の料理人が務まらなかったので、わざわざ習いに行った」というのが、コールスローサラダ。
みじん切りにしたキャベツと、薄切りにしたキュウリに塩をまぶし、20分以上放置。しっかりと下味をつけ、水分を抜きます。(薄味が好みの方は、使う塩をぐっと減らすのがおすすめです。いちどついた塩味はもう抜けません)
いちばん重要なのが、コールスローサラダの甘酸っぱいドレッシングづくりです。エドナのコールスロー・ドレッシングはなんと、「アツアツ」なのです。
エドナの「アツアツ」ドレッシング
お酢と砂糖を同量、そして少量の塩を鍋に入れて火にかけます。砂糖が溶けたら、さらに3分間沸かします。
ディジョンマスタードとサラダオイルを加え、熱いままのドレッシングを、冷めないうちにキャベツとキュウリに和えます。荒熱が取れたところで、キャベツとキュウリに生クリームとサワークリームを和えます。
…お味はというと、お酢を煮て酸味を飛ばしているため、まろやかで塩味がしっかりとしています。少し冷やすと、より味が決まります。
時短ならドレッシングは買って
ただし…!エドナのレシピどおりに、お酢を3分間も沸かすと、すごくきつい臭いがします。南部の広い台所ならまだしも、せまい日本のキッチンではちょっと難しいかも…。
日本人の味覚に合った「創味だしまろ酢」や「ミツカン簡単酢」などの便利な調味酢を使えば、酢を煮立てないでもOK。ドレッシングまで作るのが大変だと思う場合、開き直って、日本人の味覚にあった「コールスロー・ドレッシング」を使うのもいいと思います。
新鮮なキャベツをよく洗ってコールスロー・ドレッシングを使うだけでも、たっぷりとお野菜が取れますよね。小分けされているドレッシングもありますので、屋外ならこれでいいかもしれませんね!
洗い物を増やしたくない場合、または時短したいときは、キャベツを刻むのは面倒。迷わずチョッパーを使うのがオススメです。
3. ガーリック・シュリンプ
エドナのガーリックシュリンプは、炊き上げたライスにかけて、シュリンプ・ライスにするのがオススメの食べ方だそうです。南部では朝ごはんにこれを食べるのだとか。
作り方はとても簡単で、刻んだニンニク、たまねぎと殻を剥いた海老をバターかオイルで炒めるだけ。彩りに青ネギも少し加えると良いそうです。
材料全部をビニール袋やジップロックに入れて保冷しておけば、屋外でも使い捨てのアルミ製バーベキュープレートを利用しておいしく調理できます。小さなパンにのせて、前菜やおつまみに。パスタを和えれば、シュリンプ・パスタにも(この場合はバターではなくてオリーブオイルを使っても美味です)。
サイドディッシュは仕込み勝負!
Netflixのリアリティーショー、「アメリカン・バーベキュー最強決戦」でも、出場者たちを悩ませたのは、多彩なサイドディッシュづくり。これは下準備が必要なサイドディッシュを、お肉の焼き上げと同時進行で短時間で行わなければならなかったから。
事前に仕込んでおきさえすれば、サイドディッシュづくりは簡単です。お肉を食べて、野菜を食べる、そんな健康的なバーベキューのために、ぜひともサイドディッシュのレシピを増やしたいですね!
エドナのオリジナル・レシピで本場南部料理を
「The Taste of Country Cooking, 1976(テイスト・オブ・カントリークッキング 1976年刊)」には、まだまだたくさんのレシピが収蔵されています。
日本語訳はいまだないのですが、簡単な英語と豊富な写真が掲載されていますので、本場南部料理を知るうえで、きっと役に立つ一冊といえるでしょう。ぜひ手に取ってみてほしい南部料理のバイブルです。
この記事の執筆者
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