「フェムテック」「生理を語る」への違和感と、生理の貧困について

「フェムテック」「生理を語る」への違和感と、生理の貧困について

最近、メディアでよく耳にするようになった「フェムテック」と「生理を語る」というフレーズ。だけど、この風潮に違和感を感じている女性も多いのではないでしょうか?ハイテク高価格な生理用品を開発したがる「フェムテック」と、生理の貧困の矛盾について考えてみます。

「生理」を大声で語ることへの違和感

生理は長いこと、女の間だけでそっと語り合うもの、とされてきましたよね?そんな生理が、ここ数年で急に「男性も生理を知ろう!」「男性も生理用品を見てみよう!」といった、極端なあけっぴろげさを持つようになりました。

生理を大声で語ることで、女性の生理痛が和らぎましたか?会社で男性の目をまったく気にせず、生理休暇を取れるようになりましたか?

いいえ。あまりメリットは享受していないと思います。女性が生理前に体調不良を感じることはひとつも改善されておらず、生理の話、生理用品の話がメディアで独り歩きしている印象があります。

いちばん大きな違和感は「フェムテック」の登場です。

生理を商売にする「フェムテック」

フェムテックが登場したときに、あるデジャヴ感がありました。

フェムテックに飛びついている人たちを冷静にみると、大きく2種類。メディア(ほとんどは男性が運営トップ)と、フェムテックを商売にする女性ビジネスマンです。

普通の主婦や会社員は「フェムテックがぁ…」なんて、論じても、お腹が痛い日は痛い。それでも働かなきゃならない日はある。それだけだから、気まずい思いをするぐらいなら、語りたくもないのが本音ではないでしょうか。

と、同時にスポットライトが当たり始めたのが、生理用品という必需品にすら手が届かない女性たちがかなり増えているという現実です。

生理用品というのはフェムテックが流行するずっと以前から、その性質上「金儲けのネタ」にしやすく、されやすい商品です。これを説明していきます。



生理はマーケティングの「ネタ」だった

日本で有名なある社会人教育の授業では、何年にもわたり、初回授業にマーケティングを生理用品を使って説明していました。こんな感じです。

商品開発を考えていくときに、まずは日本の人口をおさえる。たとえば、生理用品。日本の人口の半分は女性だ。そして14歳ぐらいから50歳ぐらいまでの女性はどれぐらいいるか、だいたいざっと計算する。そうすると生理用品の市場規模がわかる。1か月に1回、年に12回、いくつの生理用品の販売が見込めるだろうか…?

この授業が行われていた頃、このビジネススクールの受講生にまだまだ女性は少なかった。女性受講生はとても気まずい思いをしていたと思います。どうして市場規模の出し方を考えるのに、わざわざ生理用品を使わなくてはならなかったのか。

マーケティングのセグメントを国別、性別、年齢別で切っていく、という話に最適だったのかも知れませんが、それにしても、無神経でした。他にもいろいろな製品があるはずなのに。

女性の生理を市場規模として語らないで

最近のフェムテック絡みの情報を見ると、女性の生理を「新製品の可能性」×「市場規模」として扱っている人も多いように感じられてなりません。

本当に女性の体調を気遣ってくれているのでしょうか?そもそも、大声で生理を語って欲しいと思わない人も多数いる中で、一部の人が声高に生理を語るのは、精神的に苦痛を与えているかもしれないのに?

もっと緩やかな働き方、メンタルのケア、気持ちが明るくなるようなやり方はないのでしょうか?

ハイテク下着に期待はするけど…?

先日、クラウドファンディングで作られたというハイテク下着も話題になりました。生理2日間を、生理用品なしで過ごせるほど吸収力がある、というのが売りだそうです。

だけど…まずはとんでもなく、高い。

下着1枚で数千円、それを2~3枚用意すると万単位の費用になります。高過ぎです。布ナプキンのほうがはるかに安くて便利です。

そして、衛生面で不安。

「ナプキンの付けっ放しは病気になる」「つねに清潔に新しいナプキンを」と、教えを受けてきた女性は多いのではないでしょうか?それから…ただでさえ大変な生理期間中なのに、洗濯とかどうするの…?という声が正論だと思います。

ナプキンより環境に優しい…?

環境への優しさは大事でしょうけど、使い捨ての生理用品が担保してくれる便利さと安全性は、大事じゃないんでしょうか?もっと壮大な無駄を、社会は放置していませんか?と突っ込みたくなります。

どうやら、女性の生理の苦労を理解し、技術で解決する…という方向性は、間違ってはいないのですが、最近のメディアを賑わすフェムテックはどこか間違っていないか、ひっかかります。

生理が重い女性には、フェムテックとかで生理中もいつも通りガツガツ働けるように、という考え方自体がキツイ。それよりも、少しゆっくりさせてくれるほうが、ありがたいです…。



基本的な生理用品にバリエーションを

フェムテックでものすごい高価格の下着を売りさばこうとする前に、今の生理用品も見直してほしいですよね。

じつは、めったに良いと思わない「生理を語る」系の商品で、「これはいいかも!」と思ったものがあります。

ソフィ シンクロフィット

いつもの生理用品に乗せて使うだけで、わずかな隙間からの伝いモレが防げるという画期的な吸収体。普通の生理用品がいつもより2時間も長く使えるというメリットも。値段がとても安いし、トイレに流せるというのもとても便利。

エリス mika ninagawa コラボシリーズ

生理用品の定番、「エリス」に蜷川実花さんが撮影した美しい写真をちりばめたナプキン。

少しでもキレイなものを見て晴れやかな気持ちになってほしい、他人に見られても恥ずかしくないものを、そんな優しい気づかいを感じました。ハイテクでなくていい、こういうものでじゅうぶんです。

エリエール公式サイト 「エリス コンパクトガード × M / mika ninagawaコラボデザイン」キャンペーンページ
エリエール公式サイト 「エリス コンパクトガード × M / mika ninagawaコラボデザイン」キャンペーンページ

残念なことに、このきれいな生理用品は、もともとが数量限定。売り切れ後免だそうです。

ローテクでいいんです、普通のものを、普通の価格で、女性が喜ぶかたちに改善する…これが正解じゃないんでしょうか?

社会のために格安の生理用品も作れ!

生理用品が高いことが問題になっていますが、「お徳用大容量パック」みたいな、安い生理用品をどっさり売る会社があってもいいと思います。最近は、みんな高機能、高価格になりすぎです。

マーケティング頭で、高付加価値、高価格を追求するのはやめて、本当に困っている女性のために、無料配布できるぐらいのスペックのものを作って頂きたいです。

生理にはフェムテックよりローテク、そして働き方の柔軟性を。

ものすごく生理が重い人、軽い人。生理以外にも家庭の事情などがたくさんあって、つらい人。バリバリ働きたい人、そうでもない人。いろんな女性がいて、いろんな生理がある。だから、いろんな生理用品や、いろんな働き方が選べるのが理想。

お願いです、生理用品はやたらなハイテクより、ローテクでいいので、価格とサイズのラインアップを広げてください。タンポンなんて、あまりの品ぞろえの貧弱さにゾッとします…。身長150㎝の人も、身長170㎝の人もいるんです。バラエティという言葉を知っていますか?

ごく当然のことなのですが、あまり言っている人がいないので、不安になったので、書かせて頂きました…。



この記事の執筆者

林 晶

林 晶

人材紹介会社でキャリアコンサルタントとして数百名の仕事の悩みを聞いた経験を持つ。子育てを経てキャリアライターに。得意なライティング分野は、ベンチャー業界、不動産投資、外資系の働き方、子育てとキャリアなど。趣味は自転車で神楽坂と谷根千をブラつくこと。

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