毒親との付き合い方①理想形を期待しない
大人になってから毒親とふたたび向き合うにはどうしたらいいのか、考えてみましょう。毒親とは、親としての立場や子供からの愛情を無意識に利用し、子供を精神的に支配して悪影響を及ぼすタイプの親とされます。毒親の精神的支配をどうとらえて立ち向かうべきでしょうか?
「毒親」とは?
最近よく耳にするようになった言葉である「毒親」。毒親の定義とはなんでしょうか?
「毒親」は心理学や幼児教育学の専門用語ではありません。「Toxic Parents, Overcoming Their Hurtful Legacy and Reclaiming Your Life, Susan Forward, 1989(邦題:毒になる親 一生苦しむ子供、日本では1999年出版)」という本の著者、スーザン・フォワードというグループ・セラピストによって創られた言葉です。
モラルハラスメント、いわゆる「モラハラ」を専門にした心理学者が1990年代初めに取り上げ始め、家庭内の問題(虐待や過干渉)が脚光を浴びるようになったここ30年(日本ではここ20年)で定着したといわれます。
毒親のタイプ
毒親のタイプは以下の4つに分けられるとされています(以下はWikipedia「毒親」による分類を引用しました)。
- 過干渉、統制型の親(最も訴えが多い)
- 無視親(ネグレクト)
- ケダモノのような親(激しい暴力や暴言・性的虐待など、心身の健康、時には生命にも関わるもの)
- 病気の親(周囲の適切な支援と保護が必要な精神障害の親、ごく少数であるが反社会性パーソナリティ障害のような親)
毒親の特徴には、虐待と切り離して考えることが難しい「ネグレクト」や「身体的な暴力」も含まれるようですが、よく取り上げられるのは、精神的な束縛や苦痛など、より水面下で行われるタイプのハラスメントといえます。
ここからは40代になってもまだ毒親からの呪縛から逃れられないAさんのケースを見ていきましょう。
40歳になって深まった母との関係
Aさんは40歳になって、一時期薄まっていた実家との関係を深めたいと感じていました。40代になった彼女にとって、キラキラした新しいときめきを追うより、自分の生まれ育った場所や、自分の老後が気になり始めたのです。
Aさんは、しばらく疎遠だった実家の母親に連絡するようになり、月に一度は電話をしたり、母の日、誕生日、クリスマスと年に三度もプレゼントを贈るようになっていました。
プレゼントに決して喜ばない母
母との距離が近くなってしばらく、Aさんはイライラを感じるようになります。
わざわざプレゼントを贈ったのに、届いたはずの日が過ぎてもお礼の電話をしてきません。しびれを切らせたAさんが電話をすると、「まだ開けてない」とそっけなく、「今から外出するところだから」と電話を切ったりします。
普通の感覚でいえば、プレゼントをもらったら喜んでくれそうなもの。娘からの誕生祝いの電話をガチャンと切ることはおかしい気がします。プレゼントを開けて楽しく世間話をして、お互いに意気投合できればいいのに…。絶対にそうはしてくれません。
Aさんは自分が贈ったプレゼントを着けた母の姿をほとんど見たことがないそうです。「たぶん、バッグなんかはブランドショップに売ってしまったんじゃないか…」とAさんはにらんでいます。
「可哀想に」を繰り返す電話
しかし、ときおり母のほうからかかってくる電話はあります。たいてい土曜か日曜のほっとした時間帯にかかってきて、「どうしてるのー」という何気ない声がけから始まるのですが、しばらく話すと必ず「可哀想に」と繰り返し始めます。
「結婚できなくて可哀想に」「若い頃まともな男と付き合えずに可哀想に」「子供がいなくて可哀想に」「就職氷河期で可哀想に」
実の親が心配していってくれている、と思えば、怒って電話を切るわけにもいかず、Aさんは母親の「お前は可哀想な娘」という話に付き合います。ようやく電話を切ると、うんざりして悲しくてやりきれなくなります。お休みの一日が台無しです。
40歳にもなって「毒親」は甘え?
Aさんは母との関係が子供時代以上にドロドロしてきたのに嫌気がさして、友人に愚痴をこぼしました。
「いつも期待以上にがんばってきたのに、褒めてくれたことがないし、旅行なども妹とは行くのに、私は誘われたことがないし、実家に帰省すると早く帰れと言われるの。」
1時間以上Aさんの話を聞かされた友人の反応は、そっけないものでした。
「40歳にもなって、毒親って…、いいかげん割り切れば?うちの母は入院して長いから、元気なだけでうらやましいけど?」
Aさんの母親への気持ちを理解してくれる人はおらず、やはり普通の親子関係で育った人にはこんな関係を理解してもらうのは難しいのです。
毒親との関係を占い師に観てもらう
Aさんは理屈ではわからない母の態度を、なんとか理解しようとします。占いにまで手を出しました。自分と母の前世の因縁などが悪いのでは、とまで悩んだのです。
占い師から出た言葉は「生まれついた星の性格がすごく出ているお母さんですね。」という一言でした。
占い師によるとAさんは「親や上司に褒められたい、喜ばせたい」という欲求が究極に強いタイプ。しかしAさんの母は、自分が本当に気に入ったピンポイントのものしか、興味がないタイプなのだといいます。
Aさんがこまごまと贈る指輪やブランドものも、母にとっては「趣味と違う」「こんなの欲しくない」と感じられる可能性があると、占い師は言います。
「親だものこうあって欲しい、というのは期待しすぎで、親もただの人間です。前世とかまで考えないほうがいいですよ。原因がわかったところで、相手は変わりませんから。」
「親は変わらない」
占い師に突き放されてから、Aさんは、ずいぶんと母親との関係がラクになり、前向きになったのだそうです。
母は生まれつきそういう性格なんだ、本人もそれを選んだわけではなく、そう生まれついたのだ…と。
「あのひとは変わらない」と諦めたのが、とても良かったのです。
生まれついた星のせいで、気難しく、きまぐれなところが出ていると思えば、なんとなく怒る気もしないし、自分の態度が原因で機嫌が悪いのでは…という自責もなくなりました。
今となっては「自分の気分だけで急に距離感を縮めすぎた、向こうも戸惑ったのだろう」と、再び少し距離を取っているそうです。
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