職場いじめの心理と対処法
職場でのいじめは近年増えているといわれます。日本の職場いじめは、一部の人が苦しんでいる問題ではありません。日本の社会人の2割が悩んでいる、社会問題です。ここでは職場いじめの心理と上手なかわし方を考えてみましょう。
日本で働く人の約2割が「対人関係」で悩んでいる
厚生労働省 平成30年版「過労死等防止対策白書」によれば、「職場において強い不安、悩み、ストレスを感じる」人は全労働者の約6割もおり、うち30%は対人関係で悩んでいます。対人関係はセクハラ、パワハラをふくむとされますが、もちろん職場いじめもふくまれます。
つまり、日本で働く社会人の約2割(全労働者の6割×30%=18%)は、いじめ、パワハラ、セクハラで悩んでいるのです。
日本で退職する女性の約1割強画は「職場の人間関係が好ましくなかった」ことを退職理由として挙げています(厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概況」より)。いじめはもはや、あなただけの問題ではありません。
いじめる側に立って理由を探ろう
自分が「いじめられている」と考えると、悲しい気持ちが先だってしまい、状況が客観的に見えなくなってしまうものです。まずは自分が「いじめる側」だと仮定してみましょう。
いじめる側の心理は?
いじめる側の心理には大きく分けて2種類があると考えられます。「いじめていると気分が良くなる」タイプと、「いじめることにメリットがある」からいじめるタイプです。
「いじめると気分が良くなる」タイプ
いじめていると気分が良くなるタイプは、誰かが悲しい気持ちになると気分がすーっとするので、いじめます。いわゆる根っからのいじめっ子です。生まれつきの性格が悪いとしか言いようがありません。
このタイプには理屈は通じませんので、気にしないか、避ける以外にやりようがないところがあるのは事実です。
「メリットがあるからいじめる」タイプ
いじめることでメリットがあるタイプには、必ずいじめる理由があります。自分の欲しかった仕事や評価が取られた、または取られそうだ、職場の男性人気が妬ましい、といった理由です。お局様などの場合は「若くてかわいい子」であるというだけで潰しにかかってきたりします。
このタイプはご本人のコンプレックスや不遇が背景にあり、なかなかお気の毒ではあるのですが、そのエネルギーを自分の能力向上や仕事に向けず、いじめでくすぶっているところでアウトですよね。
いじめを正攻法でやり返すには?
職場のいじめはやっかいです。生活の糧を得なくてはならない職場で、理不尽に不愉快な体験することになるからです。
まずは正攻法で撃退する方法を考えてみましょう。
いじめの記録を取る
いじめに対しても肉体的、精神的な苦痛を理由に訴訟を起こすことは可能ですので、いじめの記録が細かくたくさん残っていれば証拠として使える可能性があります。弁護士などに相談するときも有効です。
下の厚生労働省の調査を見ればわかるように、「いじめ・嫌がらせ」に対して声を上げる人は大きく増えています。
自分が不愉快なことをされたり、言われたりしたら、細かくノートをつけます。何月何日、何時に、どんなシチュエーションで何を言われた(やられた)か。
音声記録を取ることも有効です。相手の了承を得ないで音声記録を取っても裁判の記録にはなりませんが、少なくとも実際に何が起きたかを弁護士に共有することができます。
相談できる人を探す
職場のいじめは上司にとっても逃げ出したい問題です。「プライベートなことだから」という理由で話を聞いてくれなかったり、職場によっては上司も一緒になっていじめをしてきたりする可能性があります。
直属の上司以外にも解決力を持つ相談者が得られないか、周りを見渡してみましょう。最近では人事部もパワハラやいじめを問題視しますし、ハラスメント相談窓口を持つ企業もあります。いじめが公になれば、理不尽にいじめた側が責任を取らされます。
出典:厚生労働省 平成30年版「過労死等防止対策白書(本文)」第1章 労働時間やメンタルヘルス対策等の状況 2
外部機関を探す
いじめに対して本気でアクションを取ろうと思えば、外部の機関を探すことも可能です。近年では業務委託や派遣労働者など、社内に相談ができない形態の労働者が増えているため、いじめられている人を社外から助ける機関はいくつもあります。
ただし、そういった機関の人たちの中には、労働関係の闘いのプロもいますので、中途半端な気持ちではなく、本気で徹底的にやっつけたい時に頼るべきです。
絶対にいじめが解決しない会社もある
ここまではいじめと戦うようにアドバイスさせていただきました。しかし、逃げるが勝ちという職場もたくさんあるのは事実です。絶対にいじめが解決しない会社というのもあるのです。
いじめは環境によって生み出される、ということは、さまざまな調査で明らかになっています。
企業体質に「いじめ」を生み出す仕組みがあったり、もっと悪質な場合、「退職を促す装置」としていじめが組み込まれていることもあります(営業成績が上がらない社員を辞めさせるなど)。こういう場合は、個人として闘うことにエネルギーを使うより、転職してしまったほうが早いということもあります。
そうやってダメな職場を転職して幸せになる方は、けっこう多いのです。
いじめる人はレベル、低すぎ!
いじめは人間の魂から生まれるものです。いじめる人の魂のレベルは大変低く、もはやオバケレベルです。
いじめるのが楽しくて仕方ない、誰でもいいから弱そうなタイプにいじめをしかけるのは、浮遊霊。自分の縄張りを守るために徹底的に呪ってくるのは、地縛霊。どちらもまともに相手をするにはバカバカしい相手です。
レベルの低いいじめが職場の空気を悪くすることに、静かに怒っている人は多いのです。因果応報のこんなエピソードがあります。
いじめで退職したAさんの「復讐」
Aさんという20代女性がいました。希望していた有名企業にみごと中途採用されたのですが、喜んだのもつかのま、入社後にぶち当たったのは浮遊霊タイプの同僚と地縛霊タイプのお局様のダブルパンチ。しかも上司は無関心タイプでした。
仕事も真面目にこなし、周りに気遣いもするAさんは格好のいじめターゲットにされてしまいます。結局、Aさんは苦しんだあげく、1年後に退職を決意しました。
しかし、Aさんの退職後、一緒に仕事をしていた人たちが黙っていませんでした。
彼女が辞めるときに「こんなことを気に病んではいけない。人生は長い」と言ってくれた他部署の部長さんは、いじめっ子同僚を自分の部署に引き抜き、徹底的に仕事をさせたそう。要領がいいだけで美味しい思いをしていた彼女は音を上げて退職。
一人で仕事を抱え込んでいたお局様は、判断ミスがたたり、事業をひとつダメに…。こちらも立場がなくなって退職となりました。退職時の送別夕食会は、ほとんど参加者がいなかったとか…。
Aさんは自分は指一本動かさずに見事な復讐が遂げられたことを、数年後に人づてで知りました。
いじめをどう捉えるか?で未来が変わる
いじめられている当事者の気持ち、きついですよね。つらいですよね。でも、それはずっと続くものではありません。みかねた周囲に反対に助けられたり、思い切って転職したら快適な職場に巡り合えたり…。
「自分が100%出し切ってがんばっていれば、他人をいじめるエネルギーなんか残らない。いじめる人はエネルギーを無駄にしている」
そう思って、ぜひ、「いじめられて悩むエネルギー」も省エネしてしまいましょう。
この記事の執筆者
人材紹介会社でキャリアコンサルタントとして数百名の仕事の悩みを聞いた経験を持つ。子育てを経てキャリアライターに。得意なライティング分野は、ベンチャー業界、不動産投資、外資系の働き方、子育てとキャリアなど。趣味は自転車で神楽坂と谷根千をブラつくこと。